第11回 アルツハイマー型認知症の対応2

認知症と付き合う隠れ技 キョウメーションケア
認知症高齢者研究所 所長 羽田野 政治の連載コラム 今回は第11回目「アルツハイマー型認知症への対応2」です。
生活障害改善へ 13項目で確認
アルツハイマー型認知症の対応では生活障害をいかに改善していくかがポイントになります。
今回は実例を通して対応方法を学んでいきます。
ケアの実践で重要となるのが怒りや悲しみなどの行動心理症状BPSDがどんな場面でどのように起きるのかを態度、表情、服装、行動、言語の理解力、構音障害、記憶障害、見当識、思考、計算、判断力、感情、意欲の13項目で確認していくことです。
いわゆるアセスメントとして、仮設思考で対応方法を考えていきます。では具体的にその実践を見ていきましょう。
 
Aさん83歳は女性で4年前にアルツハイマー型認知症と診断されました。大きな既往はないものの3~4分前の事が分からなくなる記憶の障害が見られます。
ゆっくりと時間をかけて対応すれば落ち着くのですが、新しいスタッフが対応すると暴言を吐き、嫌悪感をむき出し直ぐに部屋に戻ってしまいます。夜間、居室では放尿し「居室の模様が怖い」と脅えて眠りません。この方への対応方法のポイントを見てみましょう。
まず、83歳という年齢と態度、行動、思考、判断力から認知機能障害や感覚機能の低下、関節痛、筋肉痛、神経痛の有無を観察します。また、感情や意欲から精神機能の変化としては、老化に伴い直ぐに怒ったり、悲しんだりするなどの感情的変化があるかも見ていきます。更に、記憶障害から喪失体験などによる心理的変化も捉えるように観察します。生理的変化では頻脈・ふらつき・体温調節が上手くいかないなどの問題を確認し、転倒なども念頭に入れアルツハイマー型認知症の特徴である心がふさぐ抑うつの状態も確認しておきます。
認知症の進行に伴って失見当識、着衣失行、失認、尿失禁の出現が予測されるので事前にこれらの症状が出た時の対応をプラン化しておきましょう。
この実例のポイントは「ゆっくりと時間をかけて対応すれば落ち着いてくるが、新しいスタッフが対応すると暴言を吐く」などから記憶や認知に関するBPSDが出現しやすいことが分かります。初めて見た、記憶にない人に対して防衛的になって心が大きく揺さぶられ、気分障害を起こしていることや顔などの認知が出来にくく人物誤認があることも分かります。「ゆっくり時間をかければ落ち着く」ことから、寄り添いながら周囲の様子や人物をきちんと説明して安心感を与えるとよいでしょう。特にAさんの表情を見ながら常に安心できるように馴染みのスタッフが付き添うなどの関わり方がよいでしょう。
次に、「部屋の模様が怖い」と言いながら「すぐに部屋に戻ることが多い」ことから、Aさんにとって安心できる場所は「部屋」なのかもしれません。もしそうであるなら、何故安心できるかについて詳細に検討する必要があります。介護者側もAさんにとって安心できる人となれるよう関わっていくとともに、Aさんと一緒に安心して過ごせる場所を徐々に増やしていくように関わりましょう。
Aさんの放尿行為には大きく3つの要因が仮説思考できます。見当識の観察からトイレの場所が分からず部屋で放尿してしまう見当識障害があるのであれば居室の位置関係を本人が理解しやすいように調整します。幻視によりトイレの場所を誤認してしまう場合には基本的には環境を整備します。何らかの原因で緊張の抑制が障害されるため夢で見たことをそのまま行動に移してしまう睡眠障害による放尿行為であれば、トイレの夢を見ていることなどを仮説思考し、睡眠時に定期的にトイレ誘導するだけで軽減できるのです。
次回は、診断できても治せない病への挑戦、介護にゆだねられたレビー小体型認知症の症状と対応について学びます。

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