第10回「アルツハイマー型認知症の対応」

認知症と付き合う隠れ技 キョウメーションケア
認知症高齢者研究所 所長 羽田野 政治の連載コラム 今回は第10回目「アルツハイマー型認知症への対応」です。
~診断できても治せない病への挑戦!アルツハイマー型認知症1~
認知症は正常に発達した認知機能が病気や傷害などの原因によって低下し日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態を言います。多くの種類がありますが大きくは一次性認知症と二次性認知症の2種類に分けられます。認知症として現れた記憶や認知機能障害は、症状の程度により認知症の中心をなすという意味での中核症状と周辺症状のBPSD(行動心理症状)に分けて呼ぶこともあります。
今回は一次性認知症の代表的な認知症であるアルツハイマー型認知症の病態と診断についてのお話です。アルツハイマー型認知症は1906年ドイツの精神科医アルツハイマーによって発見された嫉妬妄想と記憶障害、見当識障害などを示すアルツハイマー病に準じた症状が認められる認知症を指します。認知機能障害は初期と末期では進行が穏やかですが、中期では進行が早い経過をたどります。進行速度は個人差が極めて大きく、心身の衰えによる虚弱性を伴うことが特徴です。
また、発症年齢が40歳代からと若年性に発症すること、そして一度発症したら元には戻らず、一時的な改善もみられない非可逆性であることも大きな特徴です。
私達が接する認知症の方で最も多いのがこのアルツハイマー型認知症ですが、アルツハイマー型認知症がなぜ発症するかについては今のところ明らかにはなっていません。仮説としては脳内の蛋白質の塵であるアミロイドβ蛋白質が関与している説が最も有力と考えられています。
アルツハイマー型認知症は以前は加齢に伴う認知障害との区別がつきにくいとされていましたが研究が進み特徴的な症状が見られることが分かってきました。初期では特に近時記憶の低下と言われる数分前のことが覚えられない状態が起ります。それから特に時間に関する見当識障害が先行して起ります。中期に入ると物の名前や名称が分からなくなり加速度的に症状が増していきます。そして物事の構成能力の低下や判断の障害から夏に厚着をしたりと季節感のない服装になったりして日常生活に支障をきたしていきます。末期になると人格変化が起り表情が無くなり無言・無動になってきます。活動低下から褥瘡や感染症になり肺炎で亡くなるケースが多いとされています。精神症状の特徴は、初期には抑うつと言われるうつ病傾向や不安が見られます。中期になると記憶を間違えて思い出す錯記憶が始まります。そして、精神症状は妄想などの様々なBPSDと結びついてきます。また、身体症状としては中期に多動の傾向が起り見当識障害と相まって排回が見られるようになります。
その他に、神経伝達物質の脳内濃度が減少することも特徴として明らかとなっています。中でも情報を伝えるアセチルコリンという記憶や学習、やる気を出させる神経物質の減少です。
また、アルツハイマー型認知症の診断には、病態が明らかになることから脳内の構造的変化を抽出するCT、MRI、脳血流を抽出して機能的変化を診るSPECT、PET、などの画像診断が用いられています。このように病態解明は進んでいるとはいえ、いずれも100%ではありません。そして、根本的な治療法は今のところ開発されていないのです。
現在、これまでの研究成果を踏まえて開発された薬物には認知機能に対する一定の改善効果が認められるコリンエステラーゼ阻害薬がありますが、根本的に治す薬ではありません。
このようにアルツハイマー型認知症の治療方法はまだ確立されてはいないため介護にゆだねられているのです。
次回は、診断できても治せない病への挑戦、介護にゆだねられたアルツハイマー型認知症の対応について学びます。

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