第6回「臨界期へ子供返りする放尿・弄便の対応」

認知症と付き合う隠れ技 キョウメーションケア
認知症高齢者研究所 所長 羽田野 政治の連載コラム 今回は第6回目「放尿・弄便への対応」です。
~定期的なトイレ誘致 失敗叱らず清潔に~
部屋の中で、一心不乱に股間を抱え走り回る認知症の方が、介護者が来るまでに間に合わず部屋の中で当たりかまわず放尿を始めました。
このことが何を意味しているのか、トイレに行きたいのだろうがうまく表現できない、記憶と認知の障害による失禁として捉える介護者も多いです。しかし、幼児がよくこのような行動をとることを考えると、認知症の方は神経細胞が可塑性を失い「子供返り」したということになります。
一般に、尿意を感じたらトイレに行く、鼻汁や痰の処理に鼻紙を使うなどは、ある年齢までに学習します。これを臨界期といいますが、認知症の方は学習した技能を忘却してしまい、過去化し学習の臨界期前の状態に戻り、尿便や唾液、鼻汁、垢、痰などをいじったり、周囲に放置したりする行為が見られるようになるのです。
放尿とはトイレ以外の場所で排泄することで、弄便は自分の便をいじって衣類や住宅などを汚す行為で、これらは、不潔行為とも呼ばれています。
認知症の方は、尿便の付いた下着をそのまま着ている、隠す、便をこねて壁などに塗りつけるなどの行為が多いようです。排便したオムツを外そうとしたり、オムツの中に手を入れて便に触れて床に塗りつける場合もあります。また、認知や記憶、見当識の障害からポータブルトイレを便器と理解できず、流しや洗面所、部屋の隅や、廊下の暗い所などに放尿する行為も多いと言われています。キョウメーションケアでは、このような不潔行為に対しては睡眠・排泄のパターンを観察し、規則正しく排尿や排便があるように生活のリズムを整えることを推奨しています。そして、放尿や排便直後は直ちに処理し清潔にします。匂いを残したり始末を嫌がったりするような態度を示すとエスカレートする「嫌がらせ行動」もあるからです。大事なことは失敗を叱らないことです。様子観察13項目では特に態度、表情、行動に注意を払い、排泄のタイミングなどを観察したうえで対応を行います。
見当識障害からトイレの場所が分からず放尿する場合には、廊下にトイレの方向を示す矢印の表示やトイレ前に大きな表示を付けます。夜間はトイレや部屋、廊下に照明をつけて明るくしておくと軽快できます
廊下や部屋を徘徊し部屋の隅などに放尿する場合は、部屋の隅にポータブルトイレを置いたり、部屋全体を明るくするなどして四隅が暗くならないように工夫します。また、ふたの無い丸いゴミ箱や鉢はトイレと間違いやすいので排除します。
大事なことは、定期的にトイレ誘導をすることです。放尿における多くが尿意を催して起きたにもかかわらず、それを忘れて放尿してしまうケースです。尿意の有無にかかわらず、時間を決めてトイレに連れて行くと軽快します。
定期誘導で夜間起こすときは目覚まし時計を用いたり、音楽で合図したりするのは排泄後の再入眠を安易にするので有効です。声掛けやゆすって起こすと覚醒を促してしまい逆に生活のリズムが崩れてしまいます。また、失禁や弄便は、認知症の末期に生じるとされていますが、急速な失禁や弄便を認めた場合は、身体的な変化を検証します。興奮、話す言葉やふるまいに一時的に混乱が見られる「せん妄」状態なども念頭に入れておきます。
オムツに尿便をした場合はすぐに始末し、お尻を清拭して痒みなどの不快感を持たせないように配慮します。パウダーなどで汗疹の予防を行うことを忘れずにしてください。
次回は徘徊の対応方法を学びます。

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