第2回目「妄想への対応」

認知症高齢者研究所 所長 羽田野政治のコラム連載の第2回目の記事です。
今回は、「妄想への対応」です。
以下 記事内容
~本人の心理状態や生活環境を観察~
 人間は、それぞれの環境から受ける刺激によって生きているわけです。これは環境と共存していることでもある ので行動とは人間から環境への働きかけと言うことになります。
 
認知症の方の行動に関して言えば、環境との相互作用がうまく行かず変容した生活習慣や社会に順応できない結果生じる行動と心理の症状です。
行動の症状には、暴言、暴力、不穏、徘徊などがあり、心理の症状には不安、抑うつ、幻覚、そして妄想があるのです。 今回は、妄想への対応について話します。
精神学者のヤスパースによれば妄想とは明らかに間違った判断によって、ありえないことを経験上「こうである」と思い込んでいる状態と言っています。
そのため、否定しても訂正できず、むやみに従わせようとすると、幻覚、感情、人格の障害を引き起こしてしまうのです。
認知症に認められる妄想は、アルツハイマー型認知症の軽度~中等度の方に多いと言われています。原因は記憶力の低下による認知機能の低下なので、本人の病前性格や生活環境などの過去の体験や感情の状態から原因はある程度理解できるのです。
では、妄想の対応をキョウメーションケアで行ってみましょう。様子観察13項目の態度、表情から怒りや恐れ悲しみの状態、行動からは呼吸や排泄などの生理的状態、依存傾向か拒否傾向かを確認します。言語の理解力では辻褄合わせやありえない話などをするか、また、話を理解出来ているかなどを見ます。記憶、見当識では同じ話を繰り返すか、時間や場所、人物などを認知しているか、思考、判断では環境から受ける刺激を現実として肯定するか否定するか、そして、感情では特に人物への批判や興奮の程度などを観察します。
これらの要素で観察すると、妄想は現在の心理状態や生活環境を反映している事がわかります。配偶者に先立たれ「ひとり残された」という思いから「生きる頼り」のよりどころが財布、通帳、印鑑などの金品に変わり、大切なものを盗まれまいと思う結果、身近な人を疑う「物盗られ妄想」になることが見えてきます。
嫉妬妄想では、男性は妻が外出して家に残されると「自分を捨てた」のではないかと心細くなり、その不安から妄想への転じている様子や女性では夫が他に女を作って出て行ってしまう不安から妄想を抱いていることも見えてきます。また、猜疑心から人間不信を招き他人から虐められると考え、閉じこもり、「食事を与えられない」「寝かせてもらえない」など被害的内容を身近な人に言いふらす被害妄想の方は難聴や視力の低下が原因だと言ううことも13項目からわかってくるのです。
原因がわかれば、ケアは工夫次第です。たとえば、物盗られ妄想などは、先回りして見つけ出し、品物を目立つ場所において置き、本人が見つけ出せるように誘導したり、被害妄想では、覚えている自分の時代をよりどころにして現実と思い込んで妄想的になっているのであれば、否定などをすると被害的になり人間不信を訴えるようになるので、勘違いを受容します。そして、本人に寄り添い馴染みの人間関係を築きます。会話は困らせるような質問は避け、自慢話などをさせて本人の良い点を認め、良い付き合いをします。不信を抱かれた人への苦情や批判は受容し否定や弁解はせず、気分転換を図り話題を変えるなどで妄想は軽減するのです。
次回は、幻覚の対応方法を学びましょう。

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