2012年第20回介護福祉学会「地域連携拠点整備研究事業地域包括ケアの推進可能性と検証」

○鈴木靖之(3369)、遠藤実(3368)、梶原千津子(2131)、羽田野政治(2132)
社団法人 認知症高齢者研究所

 

1 目的

KCISとはPCによるICT(インフォメーション・アンドコミュニケーションテクノロジー)を活用した医師・看護師・介護士などの多職種連携で随時変化する状態を24時間地域包括システムにて観察するクライド型ケアマネージメントシステムです

KCISは認知症の方が在宅で医療・介護のサービスが適切にできるよう多職種の連携強化を目指した地域包括ケア体制の情報共有ケアマネージメントシステムである。KCISは地域包括ケア体制に於けるケアマネジャーによる適切な介護プランの実施を目的に定期巡回随時対応型訪問介護看護の可能性を検証する為に地域にて医療・介護連携強化を実施した。医療的な処置が途切れるのを防ぐなどの仕組を多職種のネットワークでサポートするシステムとして2011年より構築実験を行い日本認知症ケア学会でも経過報告を行ってきた。本研究は、本年度の介護保険法改正に伴う介護サービス基盤強化事業のもと、KCISによる地域包括ケア体制構築の取り組みの実際を地域連携拠点整備研究事業として神奈川県保健福祉局と共に行った状況・有効性・利便性・問題点について分析調査を行い地域包括ケアの推進可能性の考察を目的とした。

2 方法

研究事業の参加5事業所【医療機関(1)調剤薬局(1)訪問介護(1)通所介護(1)居宅介護支援事業所(1)】に対する「顔の見える関係作り」交流会とKCISの使用説明、地域包括ケア体制に対するヒヤリング、アンケートによる実施状況調査依頼。要支援・要介護高齢者5名にKCISを活用した医療・介護の連携強化等地域包括ケア体制の実施をした、そのうちその1事例の結果を報告する。A氏は独居生活にて、ほぼベッド上での生活を行っている。自分の意思に反すると暴力行為が見られたり、また異性に対して性逸脱行為が見られることがある。空腹になると一人で近隣の飲食店まで行き、無銭飲食をすることもありました。

連携はケアマネジャー、訪問介護、訪問医療、訪問看護、薬局KCISにて5事業所による連携チームを組み地域包括ケアの実践を行った

3 倫理的配慮

本研究に対す個人情報は事前に対象者及び家族に伝え書面にて了承を得た。

4 結果

KCIS導入前の連携では、ケアマネジャーを中心に、それぞれの事業所でAさんのケアが行われており、各事業所は、自宅にあるノートに様子を書いていた。そのため事業所は、ノートを見ないと サービス利用時の様子が、分からない状態だった。KCIS導入後の連携では、各事業所は、他事業所で行われている様子をKCISで確認することが出来、全事業所に伝達、情報が 共有できまし

た。「連絡」が掲示板の役割として「例えば、訪問診療の結果・服薬時の様子や 残薬の確認など」 他事業所の横の繋がりがとれました。その結果以前と比較して ご本人の清潔保持・室内の環境整備が出来、BPSDが減少し 笑顔が多く見られることも増えた。研究事業アンケートの結果地域包括ケアを整備する事で、利用者に質の高いサービスが提供できる質問では、63.7%の人が地域包括ケア体制に期待をもっていると示唆出来た。「顔の見える関係作り」が必要だと思うかの比較では、「チームワークが強まり、利用者の生活に対して、同じ問題点の目標を共有できる」「各職種の専門知識を気軽に聞ける」などが半数以上と上位を占め、期待感の大きさと必要性が示唆できる結果となった。サービス担当者会議の可能性でもある「顔の見える関係」は、居宅介護支援事業所が利用者をマネジメントすることが望ましいと考えていることが示唆された。KCISを使用した 結果の項目では、7割が 使ってよかったと回答しています。利用者の情報を共有できたかの 項目でも、7割以上が 共有できたと回答しており、高齢者が 住み慣れた地域で 安心して暮らし続けることが出来るかどうかを考察する項目では、8割以上が、多職種との連携では7割以上がとりやすくなったと回答している。

5 考察

困難な状況に置かれてもKCISにより医療・介護の連携強化及び情報共有化の可能性が示唆され、これにより、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続ける可能性と医療・介護・住まい・予防・生活支援サービスを切れ目なく提供する地域包括ケアシステムの実現可能な見通しが示唆された。

6 今後の課題

在宅において介護者を ケアマネジメントする上で中心となるのは居宅介護支援事業者が望ましいと示唆され、地域連携拠点整備を行う上では、検討しなければならい課題となりました。地域包括ケアシステムの実現には、協力体制の確認、操作性の教育、地域性など、多職種連携が 円滑に進むための検討が必要といえる。またKCISの負担に関しては、指定基準案及び介護報酬案に基づき、利用者負担は無償とすることを検討とし、居宅療養管理指導費の一部をもって受益事業所負担する等の妥当性を検討する必要がある。

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