2016年 日本認知症ケア学会

大脳皮質機能局在による認知症ケア
~Kyomation Balance Sheet を用いた行動・心理症状緩和の試み~

羽田野政治1)梶原千津子1)高橋俊行2)加藤京一2)

1)認知症高齢者研究所,

2)昭和大学大学院 保健医療学研究科診療放射線領域

 

目的

Kyomation Balance Sheet(以下KBS)は、認知症の行動症状・心理症状(以下BPSD)の対応にエコノモ(Economo)とコスキナス(Koskinas)の細胞構築分類とブロードマン(Brrodmann)による大脳皮質の機能地図を整理し、行動観察から得られた生活機能を比較することで、残存能力の可能性を検討した認知症アセスメントに有用なシートである。認知症の初発症状が認められ、医療機関で認知症の診断を受けても、どのような支援やケアを行えばよいかを充分に示されることは少ない。そこで、KBSを用いて個人の症状に応じて起こりえるBPSDを理解することで、残存している機能維持への働きかけを行い認知症ケアにおいて有効と成り得るかを検証した。

方法

  1. エコノモとコスキナスの細胞構築分類とブロードマンによる大脳皮質の機能地図を照合、比較、皮質の分類と機能との関連について整理した。
  2. 臨床で撮像されたMRI画像(FLAIR像)を終脳の回、溝、葉の名称と照合、比較、萎縮部の深度並びに損傷部位を判断し程度を考察するとともに(1)(2)より皮質の分類と機能との関連を整理した。
  3. 残存能力の把握、考察を行い、精神、身体機能を刺激する手段を考察した。

倫理的配慮

本研究の目的、個人情報保護の取扱いについては、事前に本人及び家族、協力を得た事業所に説明し文章にて了承を得た。

結果

認知症患者の臨床より、学習、記憶、知覚などの複数の機能の状態を知的機能検査や行動観察評価によりBPSDの発症状態を把握し比較検討を行った結果、時系列変化では身体機能・情緒機能・認知機能のほぼ全ての機能で維持もしくは軽減しており問題行動評価尺度TBSでは3か月で77.4%が消滅したと評価できた。

考察

脳の器質的変化による機能障害と日常生活での困難に基づいた行動観察により、代償機能・残存能力の活用・感情と精神面へのアプローチ・ストレスの軽減・予見されるBPSDの予防の可能性が示唆された。

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