心と脳~第6章 熟年期~★心の鼓動と脳の神経連鎖★

最も満足度が高い年代は70歳以上のシニア層だという。

20170615子供が子育てする姿を見るのは、この上ない喜びだ。

孫の顔が目に浮かびながら、家に帰る時が特に最高だ。

そんなとき私は思う・・・老いには誰も勝てないが、抵抗してみるのも悪くない。

しかし、受け入れねばならないこともある。

張りの元だったコラーゲンやエラスチンが老化。私の肌は、南アルプスの山々のようだ。

鏡に映るのが自分の顔とは思えない。

時に恐ろしい発見もある。

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20170617このホクロ診てもらわないと・・・癌だった・・・

正確にはメラノーマ(悪性黒色腫)、原因は遠い過去にある。

太陽の紫外線か、それとも若かりし頃に使っていたスキンクリームだろうか?」

数十年前、何かがきっかけで細胞が変異し、ひそかに増殖していたのだ。

でも、まだ間にあると医師は言う。

そんな、現代医学は頼りになる。悪性黒色腫3つを切除し、癌の悩みからは解放された。

昔は、病院なんかにかかったこともなかった私だが、毎週、病院へ受診に行くようになった。こんな弱虫に老いは耐えられないと思うが、老化は生まれる前から始まっているのだ。

最初の細胞が分裂した時、すでに欠陥が生じているのだ。

20170618EGF(Epidermal Growth Factor)上皮成長因子は細胞表面に存在するEGFR上皮成長因子受容体と結合して、細胞の成長と増殖の調整に重要な役割を果たしているが、85歳になった体は、再生と修復の能力が衰えている。

筋骨がダメになる速さに再生が追い付かず、全身の骨格が変化する。

背中が曲がり始め,身長は4センチ縮んだ。

階段を上がるのは、きついが、家内が待っているならどこにだって上がる。

 

 

20170619誰かと一緒に年を取るのは素晴らしいことだ。驚嘆せずにはいられない。横になっていると2人の神経系が同調し始める。同じリズムで脈打つ心臓。まるでテレパシーのようにシンクロするのだ。

なぜ、そうなるのか理由は不明だが、家内と私はまさに一心同体なのだ。

オキシトシンの効能を研究しているデビッド・ハミルトン博士によれば、オキシトシンが十分に分泌されると、脳の疲れを癒し、気分を安定させ、ヒトに対する信頼度が増して心地よい幸福感をもたらしてくれると言う。彼女の病気を逸早く発見したのも、いつも一緒に寝ていたからこそだと思う。これまで寝言など言わなかった彼女が、急に言うようになったり、手足を動かしたり、眠りながら部屋を歩くようになった。そして、夢と現実をさまよった幻覚を見るようになった。

 

「レビー小体型認知症」と診断されたのは、その2年後だった。

20170620

だから、私は、家内が待っているなら、階段を一生懸命に上がるのだ。

結婚式でたてた誓いは60年間すべて守ってきた。

まだ、先だと思っていた。最後の誓いを除いては・・・

しかし、私に最近になって忘却が現れる・・・最後にこんなふうになるなんて・・・

年を取るにつれ、時間の流れは加速する。

だが、長生きすると想像もしなかったものを見られる。

見えるものだけじゃない・・・

見えないものまで、時々見えてくる。

しかも、穏やかに、訪れるがごとく見えるのだ。

少し意識が遠のいているようにも思える。

体が急にだるくなり、そのうち自分の重さを感じなくなる。

たまに自分の体を上から見ている時もある。

私は夕暮れの温かい光に包まれたようなトンネルのような中にいると、

目の前に、母が私の為に作ってくれた御馳走が並んだ、見覚えのある卓袱台が現れたりする。

別の時にはバイクに乗っている私が目の前を通過する。いろいろな場面を見た。長い時間ではないけど、私は、まちがいなくその場にいた。

家内が台所に立っているのに、横には若い家内が座っている変な話だが、どこの部屋にも家内がいる。こんな馬鹿話は、誰にもできない!

科学的にこの現象を証明してくれる医師もいないし、ただただ年のせいだというだけで・・・今日の日付を聴いてくる。

20170621

この年まで生きると心臓は約1億9000万リットルの血液を、約6億4300万キロも運んだことになる。

20170622地球からも木星までの距離が、たしか7億5000万キロだから、もうすぐ木星まで到達することになるだろう!

火星行きは実現していないが、私の心臓は血液を木星の距離まで運んだことになる。

そのうえ、まだ旅は続く・・・

 

 

20170623しかし、最近、大人数の会話についていくのは、時に困難だが、内耳の中の聴毛は、長年、振動を繰り返すうちに消耗してしまった。

今では世間の音が遠く聞こえる。

だが、私はできないことを嘆くよりも、今までしてきたことや今もできることを考えたい・・・

私は素敵な人生を長く送ってきた。

こうも長生きするとは思わなかった。

 

 

20170624ちょっと計算してみたから聞いてほし、私はこれまで、7万5千リットル以上の飲み物を飲み、63トン以上の食べ物を食べた。

9億回以上、まばたきし・・・

四半世紀以上を眠って過ごした。

そして、言うまでもなく40億回の鼓動を刻んだ。

こうした数字を見ると、ただ驚嘆するが、でも、それらは数に過ぎない、本当に大切なものは、数えることが出来ないモノだということに気付かされた。

愛・好奇心・高揚感・希望・優しさ・そして喜び・・・

20170625

これらを与えてくれたみんなに感謝したい。

素晴らしい人生に乾杯・・・私の誕生日ケーキ、吹き消えないほどの蝋燭の数に喜びと感動を感じる。

2017062640億回目の鼓動、あと何回、刻めるかわからないが、だが、最初の鼓動と同様に、いつか必ず最後の鼓動を打つ時が来る。

最後の鼓動を打つ時、それが死への始まり。

肺の拡張と収縮もこれが最後だ、血液の循環が止まる。

一つずつ、臓器が役目を終える。

すると、ほんの数秒間、脳の活動によって意識が明晰になるという。その時、何が見える?

人生という名の旅・・・想像も及ばないほどの劇的な変化!

困難を乗り越え実現した、生きて呼吸をする声明という奇跡、過去に起きた幾多の奇跡、これから起きる奇跡、私たちが歩む道は、ゆりかごから始まり墓場で終わる。

だが終わりは先だ・・・その日が来るまで、私たちは生き笑い続けよう。

そして、これまで同様精一杯、愛そう。

それが生きてきて学んだこと、残された時間を楽しむ・・・

20170627

誰もいつ終わるか、誰にも・・・分からないのだから…

 

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