2017 謹賀新年

201701

ご挨拶

老人の気持ちに寄り添うケアを目指して

本年も認知症高齢者研究所、職員一同精進してまいります

また、この場を借りまして

卒寿を向かえられました佐藤愛子先生のご健勝をお慶び申し上げますとともに

私達に老人の気持ちと道理をご教授頂けたことに感謝し

祝意を表しまして、著書「九十歳、何がめでたい」を引用させて頂き

年頭のご挨拶とさせていただきます

 

あけましておめでとうございます

九十歳になりました

皆さんの介護のお蔭で、九十回目のお正月を迎えることが出来ました

生かされていることに感謝しています

少々ものが覚えられなくなりましたが、昔のことはよく覚えています

今から60年前の酉の年、この辺りは車も通らない静かな街でした

 

大晦日

除夜の鐘が遠く「ゴーン・ゴーン」と鳴響…

拍子木の音と「火の用心」の声が通っていく

そうした声やもの音に合わせるように犬の遠吠が夜更けの中に聞こえてくる

一匹が吠え出すと、それに呼応するように方々の犬が吠える

誇らしげな遠吠えは、職分を果たしているのか安心感を覚える

 

元旦

夜明けが近づけば、何処からともなく聞こえてくる酉(鶏)の鳴声

「コヶコッコー」の声色一つで

綺麗な初日の出が拝めると分かったものです

懐かしいような、ほっとするような、しみじみと優しい気持ちになれます

 

お年玉

想えば、平和な日常の彩りは…

時折、子供が「ありがとう」と笑い声を上げながら通って行ったこと、

ピアノの練習曲の同じところの繰り返しが塀際の植え込みの向こうから流れてきたこと

家族が揃った団欒は、微笑みがこぼれ、なかなか好ましいものだった

犬の吠え声や子供が叫んだり泣いたり歌ったり、力いっぱい騒ぐ声は、私は好き

 

平成二十九年 

酉年

犬の職分も変わった「吠える犬」は、うるさいと近所から文句が来るので、

飼い主から叱られるようになった

今や犬にリボンがつけられて、吠えないように訓練され

「可愛い」ともてはやされ、家の中で丸くなる始末

思う存分、心ゆくまで吠えたいだろうに…

鶏の鳴き声はいつの間にか街から消え去った

勿論、除夜の鐘はもう聴こえない

街を走る車は、クラクションも鳴らさなくなった

「チリンチリン」は自転車の代名詞だったが、今は忍者のように現れる

戦争体験者である私は、空襲警報が鳴り響き、街が死んだように鎮まり返った

恐ろしい静寂を知っている

街の音は、いろいろ入り混じっている方がいい…

うるさいくらいの方がいい

それは、生活に活気がある証拠だから  

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 

正月料理

正月の買い出しに孫が行くという、私も連れて行ってもらった

昔は、正月料理は晦日までに作ったものだが…

元旦からスーパーが開いているとかで、正月も普段と変わらない

駅前の八百屋も魚屋も肉屋も、みんな顔見知りで

馴染には何時でも大サービスと言っては、

編み込んだ買い物籠一杯に野菜や果実を詰め込んでくれた

「もってって」「たべてみて」が合言葉だった

ところが、スーパーは、静かだ

黙々と商品の間を歩き、黙々と品物を籠に入れる

そして、黙々とレジに籠を差し出す

レジ係は黙々と引き寄せ、黙々と計算機を操作して、会計額をモニターに表示する

孫は、黙々と金を払い、黙々と袋に詰め込んで、黙々と出ていく

一言も声を出すこともない

地域で、最後まで暮らせるようにと ケアマネさんが言う

だったら、生活が平和で豊かで活気に満ちて生まれてくる音を

もう一度、聴かせてほしい…

「もってって」「たべてみて」「大サービスだよ」

 

自立支援

生きることや うやく楽し 老いの春

最近、なんの予兆もなく勝手に力が抜けるようになった

背中のあちこちに、むやみに痒いところも増えた、掻くにも手が届かず、

ずっとベッドに入っていると、体が温まって痒くなる

介護士さんに掻いてもらうのも面倒で、「孫の手」を片手に枕に就くというありさま

これは「老人性湿疹」だと先生はいう

老人性ということは根治しないということ…医師や薬に頼っても無駄だということ…

そう思いながら病院の待合室に座っている

 

初夢

若者は夢と未来に向かって前進する

私が前進すれば、死に向かう

だから、私の夢は…誰にも迷惑かけないで「ポックリ」逝くこと…

宝くじを片手に、高血圧の薬と血をサラサラにする薬と

コレステロールを下げる薬とかを飲みながら

「アハハハ」と私は笑う

 

平成二十九年 元旦

認知症高齢者研究所

社団法人認知症高齢者研究所
Senior Dementia Institute

〒224-0032 神奈川県横浜市都筑区茅ケ崎中央20−14 松本ビルB館 4F
TEL:045-949-0201 FAX:045-949-0221
Copyright © 2018 Senior Dementia Institute. All Rights Reserved.


PAGE TOP