脳と心 科学的認知症緩和ケア★不安とは心を亡くす心配事フレイルって★

20161015誰でも年をとると、経済力、健康、思い出、生きがい、ついには生活歴や生きるよりどころまでもが失われていきます。

その時々に私たちは漠然とした恐れの感情が湧きあがってくるのです。

これを不安といいます。

不安の表現は、恐ろしい、どうにかなってしまいそう、何も覚えられないなど主観的に訴えることが多く動悸、発汗、手指振戦などの身体症状も伴い破局感や切迫感からパニック発作も引起す行動心理症状BPSDの主訴でもあるのです。

認知症の介護現場では恐怖感が不安に先立って出現しているので、不安への対応では「心配いりませんよ」「怖く無いですよ」などと説得する態度は避けます。むしろ本人が納得する姿勢や態度で話を聞き不安の感情を受け止め、不安の要因や内容を整理し安心感を取り戻させ解消させます。

20161016不安感を持つ認知症の人の接し方では、一般的に対人関係に困難をきたすことが多いので、「どのように接すればよいのか」「話は通じるのか」という不安や不快感を持つことがよくあります。

また、不可解な言動や行動を目前にすると途方にくれ、認知症に対する先入観や思い込みからイライラし介護者側の立場で不適切なケアをしてしまうことがあります。この悪循環が認知症の人に不安を招きBPSDを惹き起こしてしまうのです。

たとえば、老人ホームやデイサービスで自立度が高い高齢者でも共有スペースに苦手な同居人や入居者、介護者がいると直ぐに自室に戻って出てこないことがあります。

そのうちデイサービスにも行かなくなり自室からも出てこなくなるのです。「心配ないから出てきてください」ではなく「側に居てもいいですか」と寄り添い本人の言動を受容し不安を緩和します。

トイレに行きたいのにトイレの場所が分からずに起る不安には「用足しに行きますか」ではなく「一緒に行きましょう」と声掛け一緒に付き添い本人にふさわしい支援を行います。

20161017「分からない」「どうしたらいいの」などと言う方には、本人のペースに合わせ簡単にパターン化して目の前に示しながら繰り返し伝え不安を解消します。

このような状態を「フレイル」と言います

フレイルとは高齢者で虚弱状態があり、健常と要介護レベルの中間で要介護に移行するリスクが高い状態のことです。

フレイルには身体面、精神・心理面、社会的側面の3つの領域があります。

身体面では、ロコモティブシンドロームと呼ばれる骨や関節、筋肉などに支障をきたし、思うがまま立ったり歩いたりすることが出来なくなり動作が遅くなって転倒しやすくなってきます。その中でも特に筋肉量の減少症をサルコペニアといい歩行障害や要介護状態のきっかけになります。

本人は普通に歩いているのに自分の意思に反して、うまく足運びが出来ず前屈みに転倒をするので日常生活に困難をきたし不安に陥ってきます。

それに加えてMCI(経度認知症状)による認知機能の障害やうつ病などの精神・心理的な問題、一人暮らしや経済的不安から閉じこもってしまうわけです。

フレイルの定義は体重減少、疲れやすさの自覚、日常での活動量低下、歩行速度の低下、筋力の低下とされています。

そこで、キョウメーションケアでは、まずフレイルの予防を行います。

その一つが、フレイルの確認です。横断歩道の青信号は毎秒1mの速度で渡れるように設計されているので、1秒間に1m以下になるということは、介護が必要になる目安と言われフレイルを確認することも出来ます。

20161018もう一つが、東京大学高齢社会総合研究機構が考案した。「指輪っかテスト」で確認します。親指と人差し指で指輪っかを作ります。その指輪っかをふくらはぎの一番太い部分に当てて、囲めないか、ちょうど囲めるか、隙間が出来るかでサルコペニアの危険度を調べるのです。

次に不安要素であるフレイルを防ぐため、最低1日5,000~6,000歩の散歩を定期的に行うだけで、有酸素運動になり筋肉量は増加します。

そして、食事は肉や魚、大豆や牛乳などタンパク質を中心に摂取します。

摂取量は70歳男性で71.9g、女性で61.5gを目安に摂取します。

但し、高齢者には腎機能障害を持つ方も多いので、医師や管理栄養士に相談するとよいでしょう。

次に、心の支えになるような声掛けです。不安や閉じこもり、うつなどの精神・心理面へのアプローチには声掛けの効果は絶大です。

そこで、キョウメーションケアでは「江戸しぐさ」の接遇方法で不安の方への援助を行い閉じこもりを防ぎます。

20161019江戸は、言語も習慣も異なる人々が集まった異文化のるつぼだったので、あつれきやトラブルが日常茶飯事に起こっていました。

これは、あたかも認知症の方々の世界感にも似ているのです。このような状態を未然に防ぎ、安心して楽しく暮らせるように様々な工夫をしたのが「江戸しぐさ」です。

目つきや表情、話し方や身のこなしによって、思いを表現する「しぐさ」から心の動きを察知するのがキョウメーションケアの様子観察13項目と対人援助方法なのです。

不安のある認知症の方への対人援助では、まず微笑みを交わし目があったら卑屈でなくハッピーであることが分かるよう照れくささを捨てて微笑みます。

笑顔は相手を和ませ敵意を持っていないと言うメッセージになるからです。

そして、一期一会の温かい眼差しを交わします。認知症の方は記憶障害のため明日が描けないのです。もちろん会ったことも忘れてしまいます。

ですから出会いは生涯にただ一度と考えその時を大切にする心掛けで、嬉しさがにじみ出るお愛想目つきで喉仏の位置からその方を見ます。

そして、言葉のセンテンスや呼吸に合わせ話す方の目を見て身を乗り出し、ひたすら聞く仕草でうなずきます。

相手が何を望んでいるのかを真剣に聞き察するのです。

微笑んだりうなずいたりして共感を示すしぐさや相づちは、優しい人柄を感じさせ相手の不安を取り除く隠れ技なのです。

相づちに合わせて大切なのが、和らげな話しかけです。

正面からではなく斜め45度から視線に入るように近づきます。

謙譲語や尊敬語を使う必要はありません普段の言葉使いで緊張せず自然体で丁寧さが伝われば、相手に不快感を与えることはありません。そして、横隣りに座り、同じ姿勢、同じ方向を眺めてその人の気持ちに寄り添いながら気分や態度などを察して13項目でその人を観察し不安の要因や内容を整理するだけで不安は解消するのです。

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